#14

環境ホルモン〜自然界では“オスのメス化”の生殖異常
ヒトを始めとする動物の血液中には、ホルモンと呼ばれる極めて微量の物質が数多く
存在しています。ホルモンは生殖活動など多くの生命現象をコントロールします。
原則として、受容体(レセプター)と、1対1の関係で対応、結合することで、その
生理作用を発揮することから、「鍵と鍵穴」の関係に例えられています。
ところが、この「鍵と鍵穴」の関係は必ずしも厳密なものではないことが時にあり、
極めて多数の人工化学物質がはんらんした現代社会では、いくつかの人工化学物質が、
偶然にもホルモン受容体に結合してしまうことがあります。合成された時点では、
思ってもみなかったホルモン作用が生じることがあるのです。
このような物質は、一般に環境ホルモンと呼ばれています。研究者らは以前から、
「環境ホルモンの影響で、自然界に“オスのメス化”が生じているのではないか」と
指摘してきました。ダイオキシン、PCBのほか、生殖異常を引き起こす物質の多くは、
弱いエストロゲン(卵巣ホルモン)作用を持っていることも、
次第に明らかになってきています。
1990年代の終わりには、マスコミで大々的に取り上げられたので、
覚えている方も少なくないでしょう。
我々の社会は、化学物質なしで成り立たないのは明らかです。日常生活をみても、
缶コーヒーの缶からはビスフェノールAが溶出され、健康成人の血液中からも検出
されます。成人に対しては、まず影響のないこれらの物質も、胎児・新生児期の
ごく短いある期間(臨界期)に作用すると、悪影響を与える可能性も否定できません。
だからこそ、一時のやや興味本位とも言える「環境ホルモンフィーバー」が下火に
なった今、はっきりとした科学的根拠に立脚して、この問題を考えることが必要なのです。
(柳瀬敏彦・九州大助教授)
「脱臭」で「芳香」消える?
(Q)
芳香剤で脱臭と芳香の二つの効果があるものは、芳香作用を脱臭作用が
打ち消してしまわないのでしょうか。
(A)
エステー化学によりますと、活性炭などで吸着するタイプの「脱臭」芳香剤の場合は、
芳香剤も一部が吸着し、香りが多少弱まることがあります。この場合は吸着されること
を前提に放出する芳香の量を決めています。
一方、「消臭」芳香剤の場合は、芳香作用を打ち消すことはありません。消臭の方法は
〈1〉中和や酸化還元などの化学反応で悪臭のする物質を別の物質に変える
〈2〉対象になる悪臭を香りの成分に取り込み、悪臭を感じさせなくする
〈3〉物理的に悪臭を消臭成分で包み込む
〈4〉雑菌の生育を抑制、悪臭を抑える――などが主なものです。
芳香の成分は分子量が大きく、化学的にも安定なので、芳香は弱められません。
幽霊…「怖さ」強調 表現に工夫
◆夏の夜の“主役”
夏は幽霊の季節である。夏芝居や盆興行に幽霊物が多く扱われるのは、盆の精霊祭りの時期の
前後だからにほかならない。それは祀(まつ)ってくれる子孫の絶えてしまった精霊、この世に
なにか恨みが残っていて浮かばれない精霊がやってくるのである。幽霊といえば「うらめしや」
と言いながら現れると、人々が意識しているのもそのためである。
ところで、この幽霊にも二種類ある。その一つは、その人に恨みがあるなしにかかわらず、
特定の人を目指してその眼前に出現する幽霊。その人がどこにいようと、出ようと思えば千里
を隔てても、どこにでも出られる幽霊。その二は、この世に怨念(おんねん)が残っているに
せよ、いないにせよ、決まった場所に出現する幽霊。これは人を選ばない。偶然にしろそこに
行き合わせたものは、たとえ誰であろうとその怪異にぶつかる。今は常識的にいえば前者が本当
の幽霊で、後者が妖怪ともいえる。
すなわち、幽霊が死霊であったのにたいして、妖怪は本来神であったのが、人間によって祀
られなくなって、落ちぶれた神であり、妖怪は、妖怪のすむ領域に侵入したり、妖怪を怒らせ
た人の前に現れるのである。
◆絵画、落語、歌舞伎に
幽霊の姿は、『源氏物語』『今昔物語』『日本霊異記』、江戸時代の『雨月物語』や『東海道
四谷怪談』『怪談牡丹灯籠(ぼたんどうろう)』などの歌舞伎や幽霊話に描かれてきた。こうし
た怪談の主役の座を占めるのが女性であるところにまた意味がある。それは女性が心理的・生理
的に、男性にくらべて特異な能力、すなわち強い感受性と霊力をもっていると信じられていた
からである。そして、出現するのが「生暖かい風の吹く草木も眠る丑(うし)三つ時」という
ように、夏の真夜中で、妖怪が出現するのが、なんとなく寂しげな所や冬の夕暮れどきや、明け
方が多いのと対照的である。
さて、われわれの頭の中に描かれている幽霊には足がない。これは幽霊というものを意識しは
じめた昔からであろうか。いや、もとは足があったのである。実際、幽霊の足音というものも、
われわれの空想を刺激するせいか非常に効果的である。もっとも怖い足音が、円朝の「牡丹灯籠」
のカランコロンというげたの音である。下半身のボーッとした姿で、草木も眠る丑三つ時、生暖
かい夏のそぼ降る雨の中、川のほとりの柳の陰あたりに、ドロドロと現れるというかたちは、
近世の文学的修飾のあいだに自然にまとまってきたらしい。
とくに幽霊に足がなくなったのは、円山応挙(まるやまおうきょ)(江戸時代中期の画家)
がそのように幽霊を描いてからだといわれる。
これがさらに芸能上技術的に工夫され、舞台の上から「幽霊は足のないもの」という観念を
観客に植えつけ、それが常識化したのである。この工夫は江戸の河原座の鶴屋南北と名優尾上
松助によってなされ、文政八年(一八二五年)三代目尾上菊五郎によって上演された怪談狂言
「東海道四谷怪談」が決定版となった。この狂言で、生づめのはげる工夫、髪の毛の抜ける
仕掛け、半面仮かつらを使っての変相、ちょうちんから幽霊の抜け出るシーンなど、さまざまな
新工夫がなされ、幽霊芝居の一つの型をつくったのである。
尾上松助が応挙の絵などを参考に扮装(ふんそう)を考案し、すそをだんだん細く長くひく
形にし、足を見せないようにして、宙乗りをさせるなどの仕掛けにしたことが、庶民の信仰上
の幻想を具象化するうえに非常な影響を与えたのであった。幽霊から足をなくしたことは、
霊魂は中空を飛び、いついかなるところへも自由に飛行することができるという、庶民の信仰
を具体的に表し合理化した。
ところで、幽霊話といえばたいていは復讐(ふくしゅう)劇・怨霊(おんりょう)劇のように
見えるが、決してそうではなく、死んで忘れられてしまう自分を思い出させたくて、
姿を見せたり、直接訴えたい人ばかりでなく、それを伝えてくれる人の前にも現れるという、
弱々しい心優しい幽霊もいる。
F1レースの燃料
(Q)
自動車のF1レースでは、どのような燃料が使われているのでしょうか。
(A)
海外、国内を問わず、多くの自動車レースで使われているのは市販の
ハイオクガソリンと同じものです。使用できるガソリンの特性や、特定の
物質の成分量などは、競技ごとに、国際レースはFIA(国際自動車連盟)、
国内レースはJAF(日本自動車連盟)が定めています。
F1で使われるガソリンは、オクタン価が92―102、鉛は1リットル中
0.005グラム以下など、19項目について規定。特殊な添加剤などは使用
できず、1戦ごとに適合検査を受けます。国内レースでは、90年代前半までは
各チームがガソリンを持ち込んでいましたが、成分検査やコストの問題から、
現在はレース場内のスタンドで販売しているガソリンを共通で使っています。
かかりつけ医を持つ
医師も看護師も、心や体の調子を悪くすることが、しばしばあります。
医師や看護師は、病気のことは、自分がよく知っているから、自分で適当に
(適切に?)判断し、薬を飲んでいると、皆さんはお考えでしょうか。
実は、そうではないのです。実に一生懸命に、勉強して、調べて、考えたうえで、
かかりつけの主治医を持っているのです。持っているというより、長い間、
大事にして(してもらって)かかりつけの先生と付き合っているのです。
ロシアの作家、ソルジェニーツィンが書いた「ガン病棟」の中で、主人公が選んだ
主治医は、自分が学生の時に教わった外科の助教授であった、と記憶しています。
私自身のかかりつけ医は、大学の同級生の1人です。福岡にUターンして以来、
20年以上お世話になっています。家族が診てもらうこともあります。
かかりつけ医のことを、家庭医と言ったり、ファミリードクターと
言ったりもしています。時々は、友人を紹介することもありますが、
いつも「良い先生を紹介してもらった」とお礼を言われます。
私のかかりつけ医は「3時間待ちの3分診療」ということもなく、
患者さんが納得する説明と治療をしています。自分の専門外だと判断すると、
検査結果やレントゲン写真を添え、丁寧な紹介状を書いてくれます。
さて、日本の医療は、いつでも、どこの医療機関でも、診察を受けることができます。
しかも安くて、公平で、技術レベルは大変高いと、世界的には評価されています。
ところが、心臓や脳の優れた専門技術を持った医師が、あふれんばかりの風邪の
患者さんの診療に、手を取られている現実もあります。
普段から自分の家族の心と体のことをよく知っている、かかりつけ医を持ち、
その紹介で専門医にゆっくり診てもらうシステムを、患者さんも努力して
作っていくことが、これからますます必要になるでしょう。
(西岡和男・九州大教授)

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